『癌(病気)と戦おうシリーズ1・乳酸菌』 No.34 2013.7
『乳酸菌は良い』と言うことは、ほとんどの方が知っていることだと思いますが、どうして良いのか?と聞かれるとどうですか?
『便秘や下痢を治してくれる』『腸の動きを良くする』・・・ふむふむ・・・そうですね。腸の動き(消化・吸収)がスムーズに行われないと、いくら口から栄養分を入れても活用されずに排泄されてしまいますよね。(栄養素を体が取り入れることが出来るような形に分解することを「消化」といい、消化器官から体へ取り込まれることを「吸収」と言います。)消化は腸内常在菌が体内の消化酵素と協力して行います。その常在菌には善玉菌(ビフィズス菌などの乳酸桿菌や球菌等)、悪玉菌(バクテロイデス、ユウバクテリウム、嫌気性連鎖球菌などの腐敗菌、病原性のあるウェルッシュ菌等)、日和見菌がいるのですが、悪玉菌が優位の環境では消化吸収はスムーズに行われません。
で、他の理由は・・・?
今日はその乳酸菌について、病気・・・その中でも、大事なメルモの命を奪った『ガン』に関連づけてお話していきたいと思います。
『ペットのがん、アトピー、難病は腸から治す!』
この一文に目が釘付けになりました。というのも、20年近くこの仕事をしてきて、病気の動物さんを診たり、うちの動物達で感じたり、自分自身の体調から『健康の基本は腸である。』と感じていました。外来でも、私が『基本は腸ですからね』と言っているのを聞かれたこともあるかと思います。腸が丈夫な子は大丈夫(腸が弱い子がすべて弱いというわけではありませんが)。うちの18歳まで生きたあいちゃん(シェルティ)なんて、小さい頃から何を食べても下痢も嘔吐もしない、とても腸の丈夫な子でした。
腸とガン(病気)の関係を科学的にはっきり理解したい(?_?)。そんな理由から、乳酸菌の勉強を始めました。
まず、言葉の説明から。
腸内フローラとは腸内常在菌の繁殖状態を意味します。その腸内フローラが良好(善玉菌優位)であれば、発育、栄養素合成、感染防御、免疫活性、ガン抑制、老化抑制、薬物・毒物代謝促進、生理活性向上など、健康状態を改善する方向に整い、逆に悪玉の勢力が高まると不健康・発病の方向に傾く事が研究されています。
次に加齢と腸内フローラとの関係を見てみると(人間での話になりますが)、誕生からしばらくの間、善玉菌優位の状態ですが、その後悪玉菌が優位になってきます。とは言っても、離乳期以降、成年期の前期頃までは、ビフィズス菌などの善玉菌もまだまだ元気に繁殖してくれています。しかし成年期後半からは善玉菌数が激減するのです。それと反比例してウェルッシュ菌のように病原性のある悪玉菌が急増します。
さらに老年期に入ると悪玉菌ばかりはびこるようになります。これらの事実から、腸内フローラに注目する限りでは、老化とは悪玉菌が増えることであり、善玉菌を優位に保ち続けることができれば、老化を遅らせることができるのです。また、老化とは外見が年寄りになることだけでなく、免疫力が低下することでもあります。
年をとると病気になりやすくなるのは、免疫力が落ちるからなのです。こうした点に注目するならば、腸内フローラの状態をできる限り良好に保つことができれば、病気や免疫力の低下予防になるのです。ちなみに免疫とは『疫(はやり病=病原菌)を免ずる作用』イコール『感染病を免れる作用』ですが、感染症だけでなく、体を病にさせない力、病から回復させる力すべてを免疫と考えるべきです。ガンの発症の引き金を引くのも『免疫力の低下』です。
ガンの始まりは正常細胞の変異です。正常な細胞が、発ガン物質の影響や突然変異などで変異し、変異した細胞が生き延び、細胞分裂を繰り返していくとガン組織へと成長するのです。一説によれば、私たちの体の中にはどんなに健康でも常に千単位のガン細胞が存在しているそうです。全身の細胞は60兆個もあるので、何千個ガン細胞があったとしても、そのまま増えずに細胞が死んでいってくれれば何の問題もありません。体の中にはそのような異常細胞を処理する免疫システムがあり、その免疫システムを統括している自律神経が働いています。それらが正常に働いていればたとえ異常な細胞が出現したとしても、修復・排除してくれるのです。
その修復・排除に重要な役割を担っているのが血液中の細胞、白血球です。白血球は多くの種類に分化していますが、大きく分けると『リンパ球』『マクロファージ(単球)』『顆粒球』に分かれます。
リンパ球は、ウィルスなどのような小さな異物とガン細胞を攻撃する主役ですが死んでいった細胞を片づけることはできません。これに対して、マクロファージと顆粒球は細菌や細胞の死骸や死にかけている細胞(ガン細胞含む)を片づけてくれます。要は、皮膚の表面の細胞が死んだら垢となって脱落していきますが、体内の垢を処理してくれるのです。その中でもマクロファージは処理した異物に対してサイトカインという物質を放出します(リンパ球もサイトカインを放出します、リンパ球の詳しい話は次項で((+_+)))。簡単に言うと、敵の情報分析をし、みんなに知らせ、臨戦態勢を整えさせるのです。よって、白血球が絶えず元気に働いていてくれればガンを抑えることができるのです。
そこで前述の乳酸菌との関係ですが、乳酸菌(どの乳酸菌でも良いというわけではないですが)の中に白血球を活性化し、サイトカインの一部、腫瘍壊死因子を産生する強い力があることがわかりました。また、腸(小腸)には免疫システムのスイッチ(免疫の司令塔)があるのですが、そのスイッチをオンにすることもできるので、免疫力がさらに高まります。そして一番最初にお話ししたように、腸の動き(消化・吸収)がスムーズに行われてこそ初めて、栄養分やサプリメントが体内に吸収されるため、乳酸菌を摂取することによって、サプリメント等のさらなる効果が出てくるのです。
難しいことを書き連ねてまいりましたが、ガンと闘うためにはまず体=腸内環境を整えることが必要なことはわかっていただけましたか?
また、今回ガンに的を絞ったようなお話の仕方をしてしまいましたが、そうではなく、すべて病気に話を置き換えることができます。例えば動脈硬化に置き換えてみると、過剰な脂質の蓄積が要因とされる病気ですが、過剰な脂質を片づける過程に白血球が元気に働いてくれれば、有害な脂質の代謝が速やかに行われ、病気の予防になります。こんな感じで、すべての病気において乳酸菌は有効なのです。
また、ちょっと意外ですが・・・お野菜、果物の中には、今まで述べてきた乳酸菌がたくさん含まれているのです。免疫落ちてきてるな~と感じたら、キャベツ、お茄子、大根、バナナ、スイカ、パイナップルなどをせっせと食べてみてください。白血球クンがしっかりと働いて、元気にしてくれるはずです(*^_^*)
ガンと闘おうシリーズ、第一弾として、乳酸菌についてお話ししました。
次は リンパ球についてお話したいと思います。ちょっと難しい話になりますが、ついて来てくださいね(*^_^*)。