オーソモレキュラー療法とは・・・。

栄養素療法=適切な食事やサプリメントなど(点滴含む)を用いて、身体を構成する細胞の働きを向上させて、様々な病気を治す治療。足りない栄養を補うだけでなく、栄養を治療に使います。
薬は対処療法、栄養は根治治療です。

オーソモレキュラー療法の肝臓治療へのアプローチ

 【慢性肝炎】
 犬で多く、肝臓内の炎症と肝機能検査の異常が続き、どんどん進行し、最終的には肝硬変になります。膵臓、胆道系疾患の合併症で起こることも多いですが、ほとんどが特発性で炎症の原因は不明ですが、炎症が強い時こそ、十分な栄養が必要となります。

 治療の目的は、炎症を抑えることですが、炎症の原因として銅の蓄積の可能性も高いため、銅の摂取量を控えることと、銅の排泄を手助けすることも重要となります。銅の排泄には亜鉛が関与します。
 

 亜鉛はアトピーの治療でも必須ですが、身体にとって必要不可欠な存在です。銅の腸管からの吸収を阻害するように作用することと、体内の銅を便と一緒に排泄させるという作用もあります。また、肝臓が壊れてしまうのを予防する(肝臓の繊維化を予防)効果もあり、抗酸化活性も有します。
 

 また、胆汁の銅排泄低下で銅が蓄積することもあるため、利胆剤使用も効果的です。
 そして抗酸化、抗線維化、抗炎症化とタンパク合成を増強し、細胞レベルで毒性を妨害し、免疫能を高めることを目的とし、シリマリン※1(ハーブの種子に含まれるフラボノイド)、BCAA※2、,総合ビタミン剤、核酸、コンドロイチン硫酸+グルコサミン(慢性肝炎の最終章の肝硬変抑制に効果)、オリーブ葉エキス(抗菌作用)、オメガ3脂肪酸、食物繊維、グルタチオン(抗酸化、解毒の維持)、SAMe※3等を摂取していきます。

 

                                                                                              残念なことに、肝不全にまで病態が進み、解毒能の低下が起こりアンモニアの解毒もできなくなると、血中アンモニア含有量が増えて脳が障害され、肝性脳症と呼ばれる意識障害を起こします。(本来アンモニアは、腸管内の細菌によって食物中のたんぱく質からつくられ、門脈を通って肝臓に運ばれ、尿素に変えられ、尿中に排泄されます。) 

 よって、肝性脳症を起こす可能性がある場合はタンパクの制限が必要となります。

 しかし、肝不全が進行すると、前述のアルブミンも肝臓で作られにくくなり、低アルブミン血症(低タンパク血症)となります。 低アルブミン血症の状態では、血管内の水分が血管外に移動してしまいます。 その結果、お腹に水が溜まったり(腹水)します。 よって、タンパクを制限するかしないかの判断が重要で、現在すでにアンモニア値が高かったり、近い将来起こす可能性が高い場合(後述のチロシンの値が高い場合)においてのみ、タンパクの制限を行います。

 また、肝臓がそのような状態の際に便秘を引き起こすと、腸内毒素が体内に入りやすくなり、さらに肝性脳症を助長します。

 便通を良くして腸内環境を改善するお薬(ラクツロース等)とともに、食物繊維、乳酸菌も使用します。とくに水溶性食物繊維は腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整え、アンモニア産生菌の増殖も防ぎます。一方、不溶性食物繊維は腸内で水分を吸収して便のかさを増やし、腸を刺激して蠕動運動を促す働きがあります。

 腹水が増えると、利尿剤を使用します。利尿剤は水分を排泄させる効果とともにカリウム、マグネシウムなどのミネラルも排泄させてしまうため、体内のバランスが崩れます。そのころになると、食欲も低下してきてしまうことも多いため、栄養療法にプラスして積極的に点滴療法も追加していく必要があります。 

  
                                                                                             ※1 シリマリン=フラボノイドの複合体:マリアアザミだけに存在するシリマリンは、DNAとRNAの働きを高め、肝細胞の内側でた                             んぱく質の合成を促進し、健康な肝細胞の損傷を予防する一方傷ついた肝臓の細胞を再生します。

 また肝細胞の外側をガードしていて、毒物が細胞膜を破って細胞内に進入するのを防ぐことと、細胞内に進入してしまった毒性物質を無毒化もおこないます。さらに肝臓内での最強の抗酸化物質のグルタチオンの肝臓内での濃度を平均35%も高めます。またSODの働きも高めることが確認されています。

                                                                                                 ※2 BCAA=分岐鎖アミノ酸:筋肉で代謝されるアミノ酸です。アミノ酸には、分岐鎖アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン)と芳香族アミノ酸(チロシン、フェニルアラニン)があります。

 肝疾患になると肝臓で代謝される芳香族アミノ酸(AAA)が代謝されずに血中濃度が高くなります。逆に肝臓でほとんど代謝を受けない分岐鎖アミノ酸(BCAA)は、アンモニア代謝などに利用されるため、血中濃度が低下します。このBCAA/AAAの比率が低下することで、肝臓の蛋白合成能が低下したり、肝性脳症が誘発されたりします。

 また、血清BCAA濃度上昇により、脳血管関門を通過する芳香族アミノ酸の量が競合的に減少し、肝性脳症の防止にもなります。また、BCAAの1つであるロイシンには肝臓でのタンパク合成を促進する効果もあります。

                                                                                              ※3 SAMe:必須アミノ酸から合成され、肝臓での酸化ダメージを防ぎ、正常なグルタチオンレベルの維持を促します。グルタチオンは肝臓の健康にとって重要な抗酸化物質です。通常必要レベルのSAMeは自然に体内で生産するのですが、肝疾患を持つ動物は、SAMe、グルタチオンの枯渇が起こります。

 SAMeを投与することでグルタチオンレベルを上昇させるだけでなく、肝細胞の成長や修復を手助けします。

 SAMeは食物中にはほとんど含まれていないため、低下している場合サプリメントで補う必要があります。また、肝疾患以外でも、薬物による肝障害、糖尿病、クッシング、膵炎、炎症性腸疾患、免疫介在性溶血性貧血、人ではうつ等にも効果があります。
                                                                                                  、
 

マリア動物病院