Dr理恵のブログ

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    『心不全って?』          No.7 2008年.2月

     先日出席した心臓薬のセミナーによると、ワンちゃん(※1)の死因の2位は心臓病で、全体の8%に当たるそうです。
     (※2)(御多分に洩れず、うちのメルモは今癌と戦っていますし【おかげさまでメルモはとても元気にしております。バックNo.3 「うちの子が癌になりました」参照】、18歳まで長生きしてくれたシェルティのあいちゃんは、12歳から心臓弁膜症で投薬を 続けていました。)               
          
     今回は心臓病の 「心不全」 について、お話したいと思います。                     
                          
     「心不全」と聞いて、どのような状態を想像されますか?人間では、胸を押さえて倒れこんだり、息が苦しくなったり・・・でしょうか?(>_<)    
                     
     難しい定義で言うと、心不全とは「心機能の低下に伴い、心臓が身体組織の必要とする充分な血液を送り出せない状態」で、それに付随して様々な臨床症状が発現します。                     
     私たち人間が気付きやすい症状としては、人間同様、倒れる(失神)、息苦しい、咳き込むなど、また良く観察してみると、運動するのを嫌がる(不活発)、お腹が大きくなる(腹水がたまる)など があります。いずれをとっても、生活の質(クオリティ オブ ライフ:QOL)は悪くなりがちです。                     
                          
     私たち人間は、咳がひどいと「仕事にも影響するし」、「夜も眠れないし」、などの様々な理由 から、すぐに咳止め薬を使ったりして咳を止めようとしますし、苦しくなんてなったら、びっくりして すぐに病院に行かれる方が多いと思います。                     
                          
     動物さんたちは?                     
     かわいそうに、自分でお薬を飲むことも買いに行くことも出来ませんし、病院にだって一人で 行けません。その分、私たちが気をつけて観察し、家族(動物さん)の苦しみに出来るだけ 早く気付いてあげて下さい。                     
                          
     「心不全」は治してあげることは出来ないけれど、初期よりコントロールすれば、症状も苦しさも最低限で済みますし、病気の進行だって抑えてあげることができます。                     
     逆に、手遅れになるまで放置をしてしまうと、苦しみもがき、死に直結する発作に何度も襲われ、非常に生活の質(QOL)が悪い中で、亡くなってしまう事になるのです。                     
                          
     では、初期の「心不全」はどのように見つけるのでしょうか? 
                        
     まず、日々の生活の中で上記の症状が出て来たら、病院に連れて行きましょう。その後は私たちの仕事です。従来の心電図検査、胸部レントゲン検査、心臓エコー検査などの他に、(現在はワンちゃんのみですが)血液検査で調べることも出来るようになりました。【NT-proBNP】  又、この検査は心電図やエコーと異なり、数値で表されるため、病気の重症度、進行状態や                     
    治療効果などを数字で確認することも出来るのです。                     
                          
        余談ですが・・・ワンちゃんの心不全の原因となる、心臓の弁の病変発生率は4歳までのワンちゃんで40%、8歳で80%、12歳で90%にもなるそうです。この結果からすると、7、8歳ぐらいからは定期健診にこのNT‐proBNT検査も入れていくと、従来の心臓の検査だけより、格段に 心不全の発見が早期にでき、今よりももっともっとワンちゃんの平均寿命が延びるのではないか?    と期待しています。                     
     又、ネコさん、フェレットさんなどでもこのような確立された検査が出来る日を待ちわびています。(研究は進んでいるので、すぐに良いお知らせが出来ると思います。)                     
                          
     もしどこか体に悪いところがあっても、今の動物さんの病状にあった適切なお薬(いいお薬 もどんどん開発されてきています。)=幸せの魔法のスパイスで、毎日がハッピー(^^♪に 元気になりますように! チチンプイプイ(^_-)-☆                     
                          
    ※1)ネコさんの死因は、1位:感染症 2位:事故だそうです。                     
    ※2)1位は人間同様”悪性腫瘍”いわゆる癌です。                    &nbsp
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    2008.02.01

  • dr

    『ハムスターさんのお話』       No.6 2008.1月

      明けましておめでとうございます。2008年、子年ですね~、ねずみさんの年です。                  
     ねずみさんといえば、ハムスターですよね(?)。今年、第一弾はハムスターさんのお話をしたいと思います。(ハムスターさんに興味のある方もない方も、知識の一つとして読んでみて下さい。)                  
                       
     想い起こせば、私は物心付いた頃から無類の動物好きで、毎日のように近所のペットショップ に入り浸っており(ショップの店員さんはさぞ、鬱陶しかったことでしょうm(__)m)、いろんな動物さんを見て、どのコを飼おうかな~>^_^<!と妄想の世界で楽しんでいました。                  
                       
     そして念願の私のペット第1号は文鳥さん、第2号はハムスターさんでした。  
                    
     文鳥さん第1号は私が幼稚園生ぐらいの頃だったため、自分で世話をしたという記憶は あまりありません。(以後、高校生ぐらいまでずっと文鳥を飼っていたため、いつから 自分で世話を始めたのか定かではないです。ちなみにうちの文鳥さんは、歴代必ず桜文鳥が パピー、白文鳥がポピーという名前でした。)そして当時、世話どころか、文鳥さんがとにかく 可愛くて、愛おしくて、よくある(?)子供の「いじりすぎのための衰弱死」をさせてしまった覚えがあります(:_;)。けれど、その初代文鳥さん以後はそのような事はせず、雛から 餌付けをして、外に出しても逃げていかないくらい良く懐いたものでした。                  
                       
     そして本題のペット第2号はハムスターさん。小学3、4年生だったと記憶しています。  
                    
     最近はやりのジャンガリアン(体調7、8cmぐらいの小さな種類)ではなくて、ゴールデンハムスター (体調15~18cmぐらいの種類で白と茶色の2色の子が多い)という種類のハムスターさんでした。この子達の世話は、ゲージの掃除から食事まですべて私がしました。      
                
     また、文鳥のときもそうなのですが、私はなぜか つがい(雄雌) で飼うのが好きらしく、白茶色の子(キキ)と、薄茶と白の子(ララ)2匹を飼いました。(これまたうちのハムスターさんは歴代、雄がキキちゃん、雌がララちゃんという名前です。)以後、中学、高校、大学の頃までは ゴールデンハムスター、社会人になってからはジャンガリアンハムスターと、私の人生には いつもハムスターさんがいました。                  
                       
     ハムスターは夜行性の動物です。人間が眠りに入る頃から大活躍(>_<)。回し車をカラカラ、カラカラ、ゲージをガジガジ、ガジガジとうるさいのなんのって・・・。そのため、昼間に遊び疲れさせればいいのではないか?と、子供ながらに考え、昼間に こねくり回して遊んでいた気がします。                  
     また、冬場は冬眠をしました。当時は冬眠をさせなければいけないものだと思っていたので、暖かい部屋にはおかずに、わざわざ寒い部屋においていました。                  
    そして「そのおかげで長生きをするのだ。」と信じていました(うちのゴールデンの場合は冬眠した子は4年以上生きました。)                  
                       
     この仕事を始めて打ちのめされました(>_<)。                  
                       
     まず、夜行性の動物は夜7時くらいから暗くしてあげます。そして半日ぐらいしっかりと運動をさせおてんと様が出てくる頃には、眠りに着かせてあげます。昼間に遊ばせるなんてもっての他(*_*;。                  
     また、一般に野生のゴールデンハムスターは数週間冬眠しますが、ジャンガリアンはしません。                  
     また、ペットとしてのハムスターは冬眠させてはいけません。厳密に言うと、そのような状態は冬眠ではなく、擬似冬眠と言います。そしてゴールデンは擬似冬眠しやすい傾向がありますが、ジャンガリアンがそうなってしまったら、非常に危険です。                  
     室温が15度以下になると発症する確率が高くなります。また、寒暖の差が激しいと発症 しやすいので、できれば室温は20~30度に保ち、朝晩の冷え込みも気をつけてください。                  
     また、うちがそうであったように、冬眠させると長生きするという説もあります。けれど、何かの加減で眠ったまま二度と眼を覚まさなくなる事だってあるかもしれません。私が上手に 冬眠をさせたとは決して思いませんが、危ない橋は渡らない方がいいと思います。     
                 
     では、死んでしまっているのと、擬似冬眠との見分け方ですが・・・(-_-)。息をしているか?していないか?を見極めます。・・・けれど、プロでないとなかなか難しいと思います。 
                     
     まず暖めます。ただ、突然暖めると心臓に負担が掛かりますので、時間をかけてゆっくり暖めます。生きていれば数時間で呼吸がしっかりしてきます。そうでなければ・・・。 死臭がしてきます(T_T)・・・。                  
     そして、呼吸が速くなってきたら、なるべく早く獣医さんに連れて行ってあげてください。
                      
     また、私は全く間違っていたのですが、ハムスターさんは基本的に2匹を一緒にゲージに 入れるようなことはしないで、1匹ずつ単独飼いをして下さい。さらに、雄と雌を一緒に入れるようなことをしてしまうと、性成熟に達する頃、それこそこれぞ 『ねずみ算式』にどんどん増え ます。それどころか、雌の攻撃性が増し、共食いなどにまで発展してしまうこともあるのです。                  
                       
     こんな調子で、世の中は知らないことがいっぱいです。一年一年、年を重ねると当然知ることが多くなります。と、いうことは去年よりも今年は、よりいろいろな事を覚え(私は獣医学のことでもその他のことでも)、どうでも良い事や忘れたい事はとっとと忘れ、有意義な人生を作りあげていきたいと思っています。  
                    
     皆様も、2008年色々な事に興味を持ち、知り、人生を膨らませていけると良いですね(^0_0^)。                  
     すべての方に幸多い一年でありますように、お祈りいたします。                  

    2008.01.01

  • dr

    『様子が変!?かも!? 』     No.5 2007.12月

     お腹が痛い!耳が痛い!体がだるい!気持ち悪い!などなど・・・。 
                     
     人間も、動物さんも、生き物であればいつも元気という訳にはいかず、たまにはどこかが痛くなったり、お熱が出てしまったり、調子が悪く なることもあります。                  
     そんな時、私たち人間(大人?)は自分の体調の悪さを自分以外の 第三者に言葉で説明する事が出来ます。又、嘘(仮病)もつけます。                  
     でも動物さんたちは、悲しいかな言葉に出して説明する事が出来ません。     
                 
     動物さんをよく観察されているお家の方は、ちょっとした体調の変化を察し、すぐに診察に来られますが、気にはなっても日々の生活で忙しく来院の時期が遅れてしまったり、来院する足がなかったり、そして一番残念な場合は、                  
    動物さんの体調の変化に気づかず、気づいた頃には手遅れだったり・・・。                  
                      
     上記の 「気づいていたけど来院する時期が遅れてしまった」 場合。                  
     当然様々な症状が出てきているのと プラスお家の方も動物さんの様子を観察を されているので、細かな問診を行い、その症状から必要と思われる検査をすれば、まず早期に原因が明らかになり、治療もスムーズに行うことができます。                  
                      
     次、 「気づいたときにはかなり悪化している」 場合。これが私たちには難しく、例えば、ちょっとした下痢を放置した結果の衰弱なのか?はたまた中毒や 他の疾患が隠されている下痢なのか?・・・。的を絞った検査が出来ず、                  
    検査代が必要以上に掛かってしまう場合もあります。 (さらに、「何でここまでほっといたの?光線」が私の体の様々な所から出て、飼い主さんは非常に居心地の悪さを感じられるでしょう・・・(>_<)?)                  
                      
     今回お話したい事は上記、最初の例の 「動物さんの体調の悪さをいち早く感じ、すぐに来院される」 場合。例えば、(何度も例に出してますが)下痢をした などと 症状が出ていれば、当然症状が出たらすぐに来院していただくのが一番なのですが 「これといった症状(発熱、下痢、嘔吐など)も原因(ワクチン後など)もない、 食欲もある、お散歩も行く、でもなんか様子が変なのよ・・・。」と・・・。   
                   
     こういう場合が一番難しい。     
                 
     動物さんは人間と違って仮病はしません。けれど、演技はします。                  
     仮病と演技の違いは?う~ん(>_<)同じですね・・・。                  
     例えばうちの子は、私が忙しくしているとどこか元気がなく、「私は調子が悪いのよ!ほっといていいの?」という顔をします。例えば、いつもは必ず私と同じ部屋にいるのに、そのような時はわざと電気もついていない部屋に一人でいて、変な声を出して鳴いたり、 又、普段は呼ばなくても来るのに、そのときは呼んでも目だけこっち向けて無視をしたり・・・。                  
    うちではこれを 仮病 でなくて 演技 と言っています。                  
                      
     また、若夫婦(とは限りませんが (^_^;) )で、赤ちゃんが産まれたりする場合、本当に  精神的ストレスから調子を壊す動物さんも多いけれど、最近は明らかに演技をしてるな~という子も多いような気がします。                  
                      
        話は反れましたが、その「様子が変!」の状態が、何かの病気の前触れなのか、演技なのか、飼い主さんの気のせいなのか・・・?こんなときが一番、動物さんと お話ができない事を悲しく思うのですが、病気なら治してあげたいし、何か文句があるなら 飼い主さんにお知らせしてあげたいし、飼い主さんの気のせいであれば、注射や採血などの痛い事はしたくないし・・・。                  
                      
     今では、体に何か炎症などが起こると上がってくる炎症マーカーを測定する事によって、ある程度検査はできるようになって来ています(ワンちゃんのC反応性タンパク   CRP:当院で検査可能 や、猫さんのα1AG:外注検査機関に提出 採血が必要) ので、現代医学機器と獣医師の勘をフル活用 & 動物さんと会話をしながら &  飼い主さんの鋭い観察力 の三つ構えで、病気の早期発見をしていきたいと 思っています。                  
                      
     最後に。人間の生活は12月は何かと忙しく、動物さんに目が行き届かないことも ありがちです。また、お正月は私たちは知っ
    てる人だけど、動物さんたちにはとっては 知らない人が家に来たり、食べた事のない物を食べてしまったり(食べさせられて?)、  精神的&肉体的なストレスが一番掛かる時期です。   
                   
     何でもなければそれが一番なので、それが飼い主さんの勘違いであろうと、動物さんの演技であろうと、何であろうと、気になったのなら早めにご来院下さい。 三つ構えで戦い(?)ましょう。                  
     また、年末年始は休診になる病院も多いため、動物さんの体調管理だけはしっかり 行ってくださいね。      
                
     そして、2007年体調を壊した子も元気だった子も、2008年は病気をせず、元気で健康な、良い年になるように心から願っています。     
                 
     では、どうぞ良いお年をお迎え下さい。 Happy New Year(*^。^*)-☆                  
                      

    2007.12.01

  • dr

    『 不妊手術の勧め』    No.4 2007.11月

     不妊手術(去勢・避妊手術)は、子供を作れないようにするためだけの手術だと思われて いる方も多いと思います。しかし、手術を行う事によって「性ホルモンに起因する病気の予防」 や、「性的ストレス、衝動からの解放」などのメリットもあるのです。    
                     
     「自然のままで!」、「健康な体にメスを入れるなんて!」、などと考えられる方もいらっしゃると  思います。    
                     
     今一度考えて見てください。そもそも、私たちが動物さんたちの自由を束縛して「 飼う 」  という行為は自然な事でしょうか?まして、交配相手を勝手に選び、妊娠、出産させ、その子供たちをママの意思とは関係ない時期に引き離すという行為、又、発情期の女の子や 発情期という特別な時期のない男の子(発情中の女の子がいれば、いつでも発情体制になれる) の、本来の正常な生殖行動を 制限 する行為は、自然な事なのでしょうか?
                         
     私は、その 制限 を動物さんたちが ストレス と感じる事のないようにしてあげることが、 家族の一員として生活する動物さんたちに対する 愛情 と 責任 だと思います。(不妊手術をすると、生殖本能が衰えます。)                     
     「性ホルモンに起因する病気」には、女の子では子宮蓄膿症、子宮内膜症、卵巣嚢腫、 乳腺炎などの他、子宮・卵巣・乳腺の腫瘍、男の子では睾丸・副睾丸の炎症や腫瘍、 肛門周囲腺腫、前立腺の炎症や膿瘍や癌、会陰ヘルニアなどがあげられます。                     
     これらの病気で、内科的治療で治るものは少なく、外科的治療(手術)がメインになります。                     
     「健康な体にメスを入れるなんて!」と若く、元気な頃に手術をしない事によって、結局 年をとって、体力が衰え、病気になって、手術をしなければいけなくなる場合が多いのです。                     
     若く、健康な動物さんの手術と、年をとり、障害が出てきている動物さんの手術は、手術そのものはもちろん、その予後も全く異なりますし、異常の発見が早ければリスクを 負ってでも(前述のように)手術で完治する事もありますが、手遅れになる場合だってあります。       
                  
     ただ、やはり不妊手術は病気を治す手術ではありませんので、よ~くよ~く考えられてから 決断をされるといいと思います。                     
     そしてやはり手術をしてあげようと思われた方、出来るだけ早い時期に行いましょう。                     
     最近のアメリカでは、6~16週令での早期不妊手術が主流になってきています。   
                      
     それはシェルター(動物保護施設)の動物たちを早期に手術し、里親に出すというのが 理由のひとつですが、やはり若い動物さんは回復が早く、精神的なショックも受けないというのが、主な理由です。                     
     日本では、まだそのような年齢では手術は行っていませんが、早くて4、5ヶ月、遅くとも 6ヶ月ぐらいでは行いたいものです。特に女の子は、発情が来る前に手術をする事によって 乳腺腫の予防効果がかなり高くなります。                     
     又、手術時期ですが、発情がきてしまった女の子ワンちゃんは、できれば生理の前後2ヶ月、女の子猫さんは、発情中は避けていただいた方がいいです。男の子はいつでもOKです。     
                    
     最後に。 
                        
     私たちは常日頃不妊手術をする際に、「手術はこれから一生しなくていいように、健康でいてね!」という気持ちで手術を行っています。病院を開院してまだ5年なので、その願いどおり、手術はまだ不妊手術しかしていない元気な動物さんがほとんどですが、みんながみんな、そのような人生を送っていってくれればいいなと思っています。                     

    2007.11.01

  • dr

    『うちの子が癌になりました。 』 No.3 2007.10月

     私の命より大切なメルモ(ヨークシャテリア・7歳)が癌になりました。 
                       
     組織検査の検査結果を見た瞬間、私の頭は真っ白になりました。                    
     「鼻腔腺癌」。メルモの病名です。                    
     鼻の穴の奥の方にできる悪性の腫瘍で、進行すると顔面の変形や脳への浸潤が起こってくる とても怖い腫瘍です。無治療3~6ヶ月、放射線治療をしても1年ぐらい・・・。                    
                         
     「うちの子がどうして?何か悪い事したの」。身内の者が病気になると、誰もが思う事なのでしょう。                    
     1週間ぐらいは現実を受け止められませんでした。ただただ、眠っているメルモを見ては、歩いているメルモを見ては、外出していてもメルモのことを考えては、涙なみだの毎日・・・。                    
     でも、泣いていても癌は進行するばかりです。治療しなくては!                    
                         
     癌には色々な種類がありますが、メルモの罹っている鼻腔腺癌は放射線療法以外効果的な 治療法はありません。やるしかない!!         
               
     しかし、放射線は人の場合と同様、正常な組織にも影響するため、副作用も起こります。                    
     それ以上に動物さんは人と違ってじっとしている事が出来ないため、放射線を当てる場合には  全身麻酔が基本です。それも、週に3~5回(総回数は癌種によりけり)と当てる必要があるため (根治的治療の場合)、相当体に負担が掛かります。最悪の事が起こり得る可能性だって ゼロではありません。                    
                         
     私のわがままな感情(メルモに生きていてもらいたい)だけで、結局メルモに辛い思いを させるのではないか?。いくら考えても結論はでません。最終的には「メルモに聞いてみよう!」と。                    
     メルモは私の顔をじっと見て「私もお姉ちゃんともう少し一緒にいたい・・・。麻酔も治療も 頑張れる!」と確かに私に言いました。と、いうのは誇張しすぎですが、メルモには生きる 力がまだまだあるように感じました。皆さんも手術や治療の選択をする場合、動物さんに 尋ねてみてください。動物さんは言葉でお話しすることは出来ませんが、心の通じている 飼い主さんには、動物さんの気持ちはわかるはずです。                    
                         
     話は反れましたが、メルモの放射線治療(計44Gry、総回数11回)は無事終わりました。                    
     
     1~3日置きに三重の南動物病院まで通い、麻酔をかけ、放射線を当てと、1kgちょっとと小さな体で頑張ってくれまし た。心配されていた副作用も、こんなに出ない子は珍しいとおっしゃっていただいたくらい 出ませんでしたし、麻酔後の回復も信じられないくらい早く、家に着くや否や、ご飯、ご飯と・・・。                    
     このように今回の放射線治療は無事すみましたが、メルモの癌は治ることはありません。 いつか再発します。それが3ヶ月先なのか、3年先かはわかりませんが、メルモが生きてくれて いる間、後悔のない生活を送って行きたいと思っています。とは言っても仕事をしているため、四六時中一緒にいる事は不可能ですが、一緒に過ごせる時間を大切に過ごしたいです。                    
                         
     私たちのこの忙しい日常、誰が動物さんの鼻の皺一つ一つをじっと見たり、髭を一本一本 観察したりなどする時間があるでしょうか?                    
     でも病気というものは不思議なもので、健康な日常生活では考えられないような、ゆっくりと 流れる穏やかで、幸せで、温かい、充実した時間も作り出してくれるものなのです。                    
                         
     いつかメルモがいなくなってしまった時、皺から髭からすべてを思い出せるように・・・。                    
                         
     ご自分のペットが癌になってしまったら・・・?。                    
     まず、泣けるだけ泣いて、涙は涸れないことを悟り、次に相手(癌)を知りましょう。                    
     倒せる相手なのか?倒せない相手なのか?             &nbs
    p;      
     そして、その動物さんにはどのような方法がベストなのか?                    
     ご家庭の事情、動物さんの状態、年齢など、一筋縄には行きませんが、一緒に考えていきましょう。                    
                         
                         
     最後に。                    
     今回メルモの癌の診断、検査、治療などにおいて、獣医師を忘れてパニックを起こしている私に ご助言、ご協力してくださった先生方、手紙、メール、電話などで励まして応援してくれた友達、2時間もかかる三重の動物病院まで、メルモを何度も連れて行ってくれた家族、本当にありがとう ございました。皆様の期待に答えるようメルモはまだ頑張ってくれるはずです。                    
     本当に、本当に、ありがとうございました。                    
                         
     「私、10歳までは頑張るよ!まだまだお姉ちゃんと過ごしたいから・・・。    By メルモ」                    

    2007.10.01

  • dr

    『動物さんを捨てないで!!』    No.2 2007.9月

      当院の患者さんである小澤さん(動物大好きの素敵なご家族です)から、「これ読んでみて!」と、1冊の本を寄贈して頂きました。
                       
     「どうぶつたちへのレクイエム」(日本出版社)。    
                   
     人間に捨てられ、動物収容施設で生命を絶たれていったどうぶつたちの、誇り高き最期の肖像アルバムです。  
                     
      「見れば悲しいに決まっている写真をなぜわざわざ見る必要があるの?」と、皆さん思われることでしょう。私もそう思いました。ただでさえ、動物さんが亡くなったり、かわいそうな話の本、映画(南極物語なんて小学生のとき母に連れて行ってもらって以来、  幼いながらにもこれからの人生何があっても見るものか!と誓いました。いい映画ですが・・)                   
    など絶対に見ませんし、話を聞くのだけでも嫌です。     
                  
     その私がなぜこの本に目を通せたか?それは小澤さんの一言。「現実を知らなくては。」                   
     思い切ってその夜(泣くに決まっているため、仕事が終わった後に)恐る恐る本を開きました。                   
     なんて辛い現実でしょうか。犬16万4209頭、猫27万5628頭。一年間に殺処分された命 だそうです。そこに収容される理由は様々です。捨てられた動物さんだけでなく、迷い動物、最期を看取るのが嫌だから、年をとって手がかかるから、妊娠したからなどの理由で、持ち込まれることもあるそうです。                   
                        
     話が脱線しますが、私には心の底から後悔している出来事があります。 
                      
     もう4、5年も前のことです。ある方が、道で倒れているといって1頭の猫を連れてこられました。                   
     交通事故です。ただ、その猫さんは事故による顔面骨折だけでなく、かなりの年齢であり、尚且つ、長年ノラ生活をしてきたような猫さんで、治療には困難を伴うものと予想できました。                   
     連れてこられた方は、純血種の猫を多数飼われている当院の患者さんであり、仕事上でも大変お世話になっていた方であったため、出来る限りの事はしようと意気込んでいたのは 私だけで、治療費も払われることもなく、「先生に迷惑がかかるから」と、3日後に 連れて行ってしまいました。その後、その方から「山に捨ててきた。」とのお言葉・・・。                   
     あの猫さんを苦しめて殺してしまったのは私です。目も見えず、介助無しで食事も 取れない状態で、生きる事はできません。苦しんで亡くなった事でしょう・・・。                   
     どこで間違えてしまったのか?                   
     言い方は乱暴ですが、病院に連れて来られた時点で飼い主さんと同じです。                   
     以後の治療をどうするか、「私は知らないわ」ではいけません。  
                     
     飼い主さんのいない動物さんたちに出来る限りの事をしてあげたいのは山々ですが、動物病院はボランティアではありません。                   
     ただ私を信じて、出来る限りの治療を選択してください。お願いします。                   
     (開院して5年すぎ、今ではスタッフも6人となり忙しくなりましたが、当時は診察も院内動物も少なかったため、あの猫さんを引取るのも可能だったのではないかと後悔しています。)                   
                        
     かなり脱線しましたが、アルバムの中の子達の目と、あの時の猫さんの目が同じなのです。                   
     何かを訴えるような、且つ生きる事をあきらめている目・・・。                   
     私たちにできる事は何なのでしょうか?                   
     まず、現実を知る事です。                   
     ご来院の際には、アルバムを手にとってごらん下さい。                   
     小さな命を守るために、私たちにできる事、少しずつから始めてみましょう。                   
                        

    2007.09.01

  • dr

    『熱中症にご用心!!』        No.1 2007.8月

     先日、2ヶ月の仔犬の頃から診させていただいていたワンちゃんが亡くなりました。                   
     まだ、5歳。熱中症でした。                   
     そのワンちゃんは少しでも目が痒いといっては病院に、少しでも腰が痛いといっては、病院にと、それはそれは大切に、愛されて育てられていました。 
                      
     その1週間前も1頭熱中症で亡くなりました。その子も、お兄ちゃんが大切に 大切に育てていたワンちゃんでした。亡くなった後も、お兄ちゃんは毎日食事を お供えしているそうです。    
                   
     2頭とも運び込まれたときには意識がありませんでした。         
              
     なぜこんなことになってしまったのでしょう?                   
     今年が始めての夏ではありませんし去年まで、いいえ今年も暑さには充分気をつけていたはずです。                    
     1シーズンに何頭か熱中症の動物さんが運び込まれます。  
                     
     真夏の炎天下、フィラリア投薬のためにワンちゃんを歩かせて来院してしまった飼い主さん、若い飼い主さんには、何で私があんなにも怒ったのかわからなかったかも知れません。待合で 呼吸速拍、虚脱、嘔吐、呼吸困難と状態が悪くなっていきました。その場が動物病院であった ため手早い処置で、半日入院で元気に帰っていきました。処置が10分遅れていたらと考えると、 今でも恐ろしくなります。     
                  
     このように熱中症は時間、体温がすべてで、ある点を超えてしまうと私たちの力ではどうすることも出来ません。冷却処置、輸液、酸素吸入、血漿輸液などあらゆる手を尽くしても 「必ず治します。」なんてことが出来ないのです。
                       
     どうすればいいのでしょうか?
     それはまず予防。暑さから動物さんを守ってあげてください。                   
     まだ、「梅雨だから」、「涼しくなったから」、「少しの間だから」、「毎年大丈夫だから」、 なんてことはありません。いつどんなときでも気をつけてください。                   
     当院で熱中症で亡くなってしまった子はこの5年で2頭です。壮絶な亡くなり方を前に それ以上何も出来なく、本当に、本当に辛いです。                   
     もう絶対にこれ以上増やしたくありませんし、亡くならないまでも動物さんがつらい思いを するのを見たくはありませんし、悲しんでいる飼い主さんを前に、私の怒りをどこに ぶつけていいのかもわかりません。                   
     ワンちゃんだけでなく、猫さんも、ウサギさんも、フェレットさんも、人間?も気をつけましょう。                   
     いつも大丈夫だからなんてことはありません。毎回気をつけてください。 
                      
     どんな時でも「熱中症にご用心!!」                   
                       

    2007.08.01

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